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2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」
投稿日 | : 2023/03/31(Fri) 08:58 |
投稿者 | : フミコ |
参照先 | : |
2023.04.06 (木) 題詠「道路」・鑑賞「忘」
題詠 「道路」
鑑賞 「忘」
出題 さららさん
鑑賞「忘」
1. 公園のぎっしり咲き満つ白桜見入りて忘れる明朝のパン さらら
2. 忘れたら沈んで二度とは浮かばない言葉書き付けるレシートの裏 たかし
3. 忘れたる鞄野洲駅に保管中これがわかりて結果良好 ひさお
4. 蒔き忘れし勿忘草の種袋瑠璃色に咲む抽斗しの隅 ひらら
5. 「歳のせい」とわが忘却を事無げに医師は答えて診療おわる フミコ
6. 「忘れずよまた忘れずよ」夕暮れを千年前のこゑは過ぎたり ウプラ
Re: 2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」
投稿日 | : 2023/04/06(Thu) 15:19 |
投稿者 | : ひさお |
参照先 | : |
1. 公園のぎっしり咲き満つ白桜見入りて忘れる明朝のパン さらら
「ぎっしり咲き満つ」は隙間なく咲き誇っている様子がよくわかる。
「見入りて」。見入るとは@みとれる、見つめる A執念をかけてとりつく
Bのぞく、C気をつけて見る、D気をつけて世話する
ここでは@の みとれる であろう。
きれいな白桜がみごとに咲いているのにみとれて満足し、つい明朝のパンを買うのを忘れてしまった。よほどきれいな白桜だったのだろう。
2. 忘れたら沈んで二度とは浮かばない言葉書き付けるレシートの裏 たかし
めったに思い浮かばないと思われる「言葉」を思いついたので、とにかく忘れてはいけないと、手元にあるレシートの裏に書きつけた。独自性のある表現を心掛けている心構えがよく表れている。作歌のマル秘事項の一つであろう。
3. 忘れたる鞄野洲駅に保管中これがわかりて結果良好 ひさお
4. 蒔き忘れし勿忘草の種袋瑠璃色に咲む抽斗しの隅 ひらら
勿忘草の種袋を抽斗にいれたまま蒔き忘れた。蒔く時期を過ぎてから抽斗をあけたところ花が咲いたようにきれいな瑠璃色の種袋が出てきた。
「種袋が瑠璃色に咲む」というのは意外性がある。
5. 「歳のせい」とわが忘却を事無げに医師は答えて診療おわる フミコ
忘れっぽくなったので、認知症を心配してかかりつけ医に相談してみたところ、医師は「歳のせい」と簡単に片づけた。安心ではあるが、なにか物足りなさも感じたのだ。。
6. 「忘れずよまた忘れずよ」夕暮れを千年前のこゑは過ぎたり ウプラ
藤原実方(生年未詳〜998)に
「忘れずよまた忘れずよ瓦屋の下たくけぶり下むせびつつ」という作品がある。ご拾遺集
707。
これは清少納言宛読んだ和歌らしい。
意味は
「忘れないよ。返す返すも忘れることなどないよ。瓦を焼く小屋の下で煙に咽ぶように、ひそかな思いに咽び泣きをしながら、あなたのことを変わらず恋しく思っているよ。」
ある日の夕暮れ、作者にはふと千年前の実方のこの和歌が頭を過ったのだ。作者にも密かに恋しく思っている人がいるのであろう。
Re: 2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」
投稿日 | : 2023/04/06(Thu) 14:53 |
投稿者 | : たかし |
参照先 | : |
鑑賞「忘」
1. 公園のぎっしり咲き満つ白桜見入りて忘れる明朝のパン さらら
明日の朝に焼いて食べるパンを買いに出た作者。
通りかかった公園の桜が満開の盛観で、見とれていて、パンを買うのを忘れてしまった・・・という歌。
上句の表現、少しおかしいところがある。
初句「公園の」と「の」で繋ぐのであれば、
●「公園の白桜ぎっしり咲き満ちる見入りて忘れる明朝のパン」だと思うし、
初句を「公園に」としたら、
●「公園にぎっしり咲き満ちる白桜見入りて忘れる明朝のパン」となる。
2. 忘れたら沈んで二度とは浮かばない言葉書き付けるレシートの裏 たかし
3. 忘れたる鞄野洲駅に保管中これがわかりて結果良好 ひさお
多分、作者は電車に乗っていて座席に鞄を置いたまま駅に下りてしまった。下りてから気がついて、駅員さんに訴えるなどしたのだろう。
その結果、鞄は無事、野洲駅に届けられて保管されていることが判明。メデタシメデタシ…である。
が、結句の「結果良好」がよくないと思った。結果良好は、非常に広範なことがらにも通じる言葉。
この歌では、鞄が手元に戻ることが判ったときの作者の安堵感に密接なもう少し狭い範囲の言葉がいいと思う。(何かは判らないが)
4. 蒔き忘れし勿忘草の種袋瑠璃色に咲む抽斗しの隅 ひらら
勿忘草(わすれな草)である。この種を蒔くのを忘れた。
思い出して種を探してみると、抽斗の隅にその袋があった。
袋の色が瑠璃色であり、それが笑(え)むという。
失くした物が見つかる・・・それが勿忘草という名であった・・・重なるものがあってよい題材と思うのだが、「笑む」がやや過ぎた表現に感じた。
5. 「歳のせい」とわが忘却を事無げに医師は答えて診療おわる フミコ
この診療、作者の持病などのために常に受けている診療であろう。その中で、「先生この頃、物忘れがひどくて・・・」という悩みを打ち明けたところ、「歳のせい」という答えが返ってきた。
作者はもう少し綾のある返事を期待していたフシがある。
非常に共感するところの多い歌である。
6. 「忘れずよまた忘れずよ」夕暮れを千年前のこゑは過ぎたり ウプラ
上句は、藤原実方の次の歌にある。
○忘れずよまた忘れずよ瓦屋の下たくけぶり下むせびつつ(後拾遺707)
【通釈】忘れないよ、返す返すも忘れることなどないよ。瓦を焼く小屋の下で煙に咽ぶように、ひそかな思いに咽び泣きをしながら、あなたのことを変わらず恋しく思っているよ。・・・と。
作者はこの恋の歌を覚えていて、ふと夕暮に思い出したか。
「千年前の」と言ったのは、読者にヒントを与えてくれたのだろうか。
作者の実際の恋の物語も、この歌に絡んでいればなお深い…。
Re: 2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」
Re: 2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」
Re: 2023.04.06(木) 題詠「道路」・ 鑑賞「忘」