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投稿日 | : 2024/10/03(Thu) 12:35 |
投稿者 | : 選者・北原千代・辰巳友佳子・水沢 郁 |
参照先 | : |
入選9
雲一つない空
西中奈緒(甲賀市)
雲一つない空は現実社会の複雑な物事から
私を解放し安らぎを与えてくれる
─何かを描くとしたら
雑念がわく
いらない
いらないというのにそっと鳥をそえてみる
鳥は大きく羽を広げ優雅に私の前を横切った
しばらく眺めていると
突然鳥の目つきが鋭く変わり
見つけた餌に向け真っ逆さまに急降下する
空は切り裂かれ私の心にもひびが入った
鳥はいらない
雲にしよう
人差指で雲を好きにレイアウトする
自由な雲は幾通りにも姿を変えた
穏やかなうちはいい
時に乱れた雲は私の心に不安をもたらす
雲もいらない
飛行機を描いた
狭い機内で思い思い過ごす人たち
新天地に向かう希望に満ちた若者や
旅を楽しむ親子の姿
ネクタイを緩め映画鑑賞してくつろぐ紳士
目を閉じ私も空の旅を楽しむことにする
長く伸びる一筋の飛行機雲を残しながら
機体はどんどん突き進む
私はどこまで来たのだろう
そっと目を開け興奮する気持ちで窓を覗く
飛び込んできたのは無残な光景
美しい自然や歴史ある建造物は焼かれ
一面灰色と化している
争い
私が描いた飛行機はいつの間にか戦闘機に
変わり人々は悲しみと絶望に満ちた顔で
見上げている
現状に苛立つ男性
溢れる涙を拭う女性
母の腕の中で怯える子
終わりの見えない争いに
哀しみだけが私に残された
鳥も雲も飛行機も何もいらない
私はもう何も描きたくはなかった
雲一つない空の下で何も考えず
ただいさせて下さい