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第73回(2023)滋賀県文学祭_詩部門_入選2 北国の山麓で 阪本博史
投稿日 : 2024/10/03(Thu) 16:27
投稿者 選者・北原千代・辰巳友佳子・水沢 郁
参照先
入選2

北国の山麓で

  阪本博史(湖南市)


山麓に続く緩やかな登り道は川沿いを真っ直ぐに伸び
道路脇は落葉松の林が秋の色を作っている
正面にはハッとする程に白く輝く大きな山が遠望でき
秋の足取りの速さを感じさせた
車を降りた私の頬はひんやりとした空気にひきしまった

川べりの林の縁で吹雪に出会った
雪の一片を手にとると綿毛をつけた虫だった
この地に居住経験を持つ同行者が言った
「もうすぐ雪が降るよ」
虫の名は「雪虫」と言うらしい

黄金の落葉松林の中に入った
そよっと風が吹き細かな葉が雪の如く林内に降る
私は落ちくる葉を首をすくめて眺めていた
今日出会う二つ目の冬だった

黄金の雪が止み、微風が辺りを撫ぜて
ミズナラの葉が一枚、もう一枚
落葉松の幹の間をゆっくりと舞い過ぎた
音符は乾いたメロディーを奏で
林内の時の流れをゆっくりと引き延ばしていった

林を出て車道に戻るともう雪虫は跳んでいなかった
車が一台通り過ぎた、大きな白い山に向かって
ああ、あの車も冬に向かっていくのだな
真っ直ぐに小さくなる車を見送りながら私はそう思った

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