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投稿日 | : 2024/10/03(Thu) 17:52 |
投稿者 | : 選者・北原千代・辰巳友佳子・水沢 郁 |
参照先 | : |
特選2
線状降水帯
谷 敏子(彦根市)
風が
黒い雲と共に積乱雲までも
引き連れてやってきた
まもなく雨が降り
地響きと 閃光をともなって
風にあおられながら
瓦屋根をたたきつけて降っている
稲穂は水煙をあげ
波うち
息つくひまもない気忙しさで
光り わめき ゆさぶって降っている
農道は
濁水で満ちみちて
川も地も全て一帯になってしまった
激しい雨の中
遠くで救急車や消防車の音が
とぎれとぎれに聞こえてくる
幾百年か昔
国盗りの男たちが
そうであったろうこの荒々しさ
城を陥れ
湖を血で染め
山や田をかけぬけ
数知れぬ戦いは
百姓たちを怯えさせ
雷雨の走り去るのを待つように
身をひそめ
荒武者の通りすぎるのを待った
今この線状降水帯が
通り過ぎるのを
同じように身をひそめ待っている
通り過ぎたあとは
息づまるような静けさ
多くの爪痕を残して去っていった