トップページ > 記事閲覧

投稿日 | : 2024/09/29(Sun) 07:38 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子 |
参照先 | : |
選評
選評 榊原洋子
今年度の随筆部門への応募総数は、53作品でした。応募していただいた皆様にお礼を申し上げます。しかし、これは過去10年間における応募数のなかで最小です。まさに由々しい状況です。作品が集まるのをただ待っているだけではなく、何らかの告知活動をすべきではないかと反省しています。
さて、応募作品を読ませていただいて、作品のタイトルについて考えてみました。題は作品と同じくらい大切です。題を見て、「何が書いてあるのだろう?」と読者の心を引き付ける題を考えてほしいものです。内容が容易に想像できる無難な題ではなく、読む人の心をつかむ魅力的な題です。随筆においては、すこし冒険をして題をつけてもいいのではないでしょうか。無から有を生み出したご自分の作品ですから、我が子に名前をつけるくらいの愛をもってつけてください。
これは、選評で何度も書いていることですが、募集要項にあてはまっていない作品は、審査対象からはずれてしまいます。
また、条件を満たした作品のなかには、付箋や写真がついたものがありました。これは審査で公平を期すための減点対象となります。書きたいこと、伝えたいことは、全て原稿のなかで完結してください。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 17:17 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
知事賞 ファイナルコンサート 馬渕兼一(野洲市)
娘から一枚のコンサートチケットを渡された作者。興味はないが捨てるのはもったいないと思い、期待せずにコンサートホールへ。ところが、指揮者に手を引かれて目の見えないピアニストが登場したところから、作者の心がだんだんと変化していく。その様子が作者の目を通してリアルに伝わってくる。
そして、ピアニストの演奏に感激した場面の表現がいい。指の動きは、美しい人魚が歌っているよう。鍵盤は歓喜に飛びはねているようだと書いてある。それまでの軽いタッチの書き方が背景になって、この表現がより際立っている。肝心な場面が輝いていることが、知事賞になった要因だ。
また、書き始めの作者と書き終わりの作者が大きく変化しているところもこの作品を魅力的にしている。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 17:10 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選1 ボーダレス 朝倉圭子(守山市)
作者は、デイサービスの職員だ。デイサービスの利用者どうしの軽快な会話から始まる文章に、すぐに引き込まれた。帰省するたびに母親の認知症が進行しているのを見た作者は、介護職に就きたいと思った。そこにさまざまな壁があることを実感しながら念願の就職を果たす。
デイサービスでの作者のお年寄りを見る眼差しが優しいだけでなく、洞察力の鋭さに感心した。作者は、どのお年寄りの中にも長年の経験と思想の結晶体があり、水晶のように輝いているという。それは、とりもなおさず作者自身の心もそうであるからだろう。この作者に会ってみたいと思う気にさせられる作品だ。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 17:03 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選2 われは湖の子さすらいの… 木村敬子(栗東市)
琵琶湖一周に挑戦をしていた作者は、脊椎骨折で入院するというアクシデントにみまわれた。激痛と戦った後にリハビリが始まった。作者は、頓挫した琵琶湖一周を続けたいとリハビリ担当の男性に話すと、快くその夢の実現に協力をしてくれることになった。それは、リハビリで歩く距離を毎日積み重ねていくことで、琵琶湖一周踏破するということだった。
男性の創意工夫とサプライズプレゼントがあり、作者が感激して涙を流す姿が容易に想像できる。ややもすると体験談になってしまいがちだが、季節の変化や俳句などが織り込まれていて格調ある随筆になっている。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 16:53 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選3 ただふたり 陸田京介(長浜市)
鑑真和上が心に住み着いているというほど傾倒している作者。本物の鑑真和上像は、年に三日しかお目通りが叶わないのだが、それが京都国立博物館に展示されると知って、はやる気持ちで出かけた。その当日は、流行病と激しい雨で入館者が少なかった。それが作者にとっては幸運となり、鑑真和上像に出会ったときは周囲に人がおらず、二人きりになるという千載一遇の機会に恵まれた。
鑑真和上への情熱がよく伝わってきた。題が「ただふたり」なので、二人きりになった感動がもっと書かれていたら、さらに良い作品になっただろう。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 16:09 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選4 魔法の声かけ 安部潤子(甲賀市)
作者の夫は妹と仲が良かった。近くに住んで、お互いに助けあっていた。その妹が施設に入所した。気になっていたが、さまざまな理由で面会ができなかった。そんな折、突然届いた妹の訃報に夫は大変ショックを受けた。葬儀に立ち会わないという夫に作者が困惑していると、隣家に住む孫娘たちがやって来た。祖父にたいして優しく接しながらも本質を突いた言葉をかける孫たちに作者は感心する。
家族のさりげない心遣いに温かさがみじみ出ている。その様子が、作者のやさしい眼差しを通して書かれている読後感のよい作品だ。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 16:03 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選5 今昔リンクし候にて 古橋童子(長浜市)
作者は古文書の講習会に参加した。その講義の中で先生が「下向」という言葉の意味がよくわからないと断りながら講義を続けていった。その言葉の響きを聞いた作者は、突然祖母のことを思い出す。「ゲコショウカ」というフレーズを祖母がよく使っていたからだ。幼い作者は、なんとなくその言葉の意味を理解していた。それは、先生が言った、「下向」と同じ意味ではないかと思う。
人間が代々繋がって生きていくように、言葉も使われ続けて生きているのだと実感する。ともすると聞き流してしまいそうなことを、キャッチする作者のアンテナの高さを感じる。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:57 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選6 私の立ち位置 山森ふさ子(大津市)
作者は、筋肉トレーニングとマッサージのリハビリを受けるためにデイ・ケアに通うことになった。介護支援制度を利用する日がいつかくると予想をしていたが、いざそうなると心は複雑。気持ちは若くても、年齢の若い人にはついていけない、かといって高齢者の仲間入りをするには抵抗がある。そこで私の立ち位置はと考える作者の心の葛藤が明瞭に書かれている。
書くことで心の折り合いをつけていく姿に、書くことの意義を感じる。推敲を重ねるうちに、考えが深まっていき作品も心も味わい深いものになっていくのだと感じる作品だ。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:51 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選7 モクレンの花は姉の香り 森永昌雄(大津市)
作者が五歳の時に、長崎県から佐賀県に疎開することになった。年の離れた姉は、父とともに長崎県に残ることに。別れの朝、駅で汽車を待つ作者たちのところに、姉が駆けつけてきた。そして姉は、別れのプレゼントにモクレンの花の花弁を作者に手渡した。その後、姉は投下された原子爆弾で亡くなった。
家族の長い歴史を語る文は淡々としているが、場面場面で交わされる会話がどれも胸に響く。これを読んだ人は、モクレンの花の香りとともにこの作品のことを思い出すことだろう。いつまでも心に残る作品だ。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:37 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
特選8 ケンケト祭り 中村郁枝(草津市)
ケンケト祭りが、ユネスコ無形文化遺産に登録された。そのニュースをテレビで見た作者は、驚き喜んだ。それは、作者の故郷の踊りだったからだ。そして、子どものころに行ったケンケト祭りの記憶がよみがえる。
ケンケト祭りについての文化、歴史が端的に書かれていること。ケンケト祭りにまつわるエピソードでは、作者のことを思う母の思慮深い愛が輝いていること。これらが、筆に力みがなく語るように書かれているのは、作者の天性の持ち味だろう。清々しい作品だ。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:32 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選1 断るということ 桂田孝司(高島市)
頼まれるままに作者が引き受けた役は、十指に余る。そうなるとそれぞれの日程調整が難しい。ある時、作者の趣味である登山と役の仕事が重なってしまい、苦しい選択を迫られた話。
心の声が素直に書かれているので、共感しながら読み進むことができた。日常生活で誰にでもよくあることをテーマにして、上手に書かれた文章だ。文は人なりというが、作者の人柄が作品に現われていて好感がもてる。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:26 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選2 父を訪ねて 安田悦子(近江八幡市)
作者の父は、シベリアで4年間におよぶ抑留を強いられた。父が亡くなってから残されていた手記を読んだ作者は、父のことが知りたくなった。舞鶴引揚記念館を訪れ、父が帰国第一歩を踏みしめた桟橋に立つ。
作者は、少しでも父を感じたくて、同じ場所に立ちたいと思う。そこにはもう同じ空気は流れていないのはわかっていても、そこに身を置いてみたいという作者の切ない気持ちがとてもよく伝わってきた。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 15:21 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選3 はかない命 渓 流(彦根市)
家の庭の木に雉鳩が巣を作った。それを見つけた時から、作者の雉鳩の観察が始まる。心配をしたり、感動をしたりと作者の心が忙しく揺れる様子がうまく書かれている。悲惨な結末になってしまったときの作者もまた、悲しんだり、命のはかなさや大切さをしみじみ思ったりといろんな心境になる。
少年のように純粋な作者が、作品によく現われて好感がもてた。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 14:55 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選4 鮒寿司好きを増やしたい 寺井一二三(草津市)
子どものころの作者は、鮒寿司が苦手だった。「一切れ食べてみて」と勧められ続けたことで、今ではすっかり鮒寿司が好きになった。作者の子どもも鮒寿司を食べなかったが同じように勧めたことで、大人になった今では、好んで食べるようになった。さあ、次は孫の番だと思う作者。
家族愛と鮒寿司愛が伝わってくる。鮒寿司作り体験の部分が少し長くなり過ぎたのではないかと思う。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 14:49 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選5 散歩をすれば 安藤タエコ(高島市)
散歩が好きな作者。マイペースで散歩をしていると、思わぬ発見がある。出会いもある。おそらくこの作品も散歩をしながら、構想を練り推敲をされたことだろう。
散歩という広いテーマで、いろんな角度から散歩について書かれているが、作者が最も好む散歩に的を絞って書くことで、散歩の魅力が読む人にもっとよく伝わるのではないだろうか。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 14:41 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選6 「コロナ」からの産物 上野初子(甲良町)
夫がコロナに罹患して、さてどうしようと対策を考える作者ではあるが、題にあるように、作者はコロナという非常事態から産物を得た。物ではない。今まで気がつかなかったことが、非日常になって初めて見えたということだ。
作者の前向きな考え方と、豊かな感受性なしには得られなかった産物だ。本音で書かれていて、読後感がよい。

投稿日 | : 2024/10/08(Tue) 14:35 |
投稿者 | : 選者・長 朔男・榊原洋子・古道紀美子・ |
参照先 | : |
選評
入選7 ドイツで魚釣り 田中 紘(近江八幡市)
約40年前、作者は仕事で西ドイツに赴任した。釣り好きの作者が池で釣りを始めたところ、その場にいた人に注意をされた。ドイツでは池で魚釣りをするための試験があることに作者は驚く。それは、自然環境保護に対する意識の高さからきているのだ。
作者は、今日の自然破壊が危機的状況であることを訴える。体験をもって語られている文章に、説得力がある。
